書写探究学習 中学書写から高校書道へ

 

 9月初旬の中学3年生S選抜クラスの書写の授業では、国語科書写の授業から高等学校芸術科書道の学習に入りました。




はじめに【書写探究学習 中学書写から高校書道の学習の必要性について】



 中学校書写の教科書には「古典から学ぼう」の単元で、唐時代の四大家と王羲之「蘭亭序」や伝藤原行成「蓬莱切」が掲載され、それらの図版を鑑賞し、高等学校芸術科書道の学びの促しが行われています。





 

 この単元の扱いでは、『書の「古典」と呼ばれている古い時代の優れた書は、楷書だけではなく、行書や日本の仮名にもあり、書を学ぶときの手本として大切に受け継がれてきました。その時代を鑑賞してみましょう。』と目標が示されています。




 新学習指導要領では国語科書写と高等学校芸術科書道との接続が重視され、また今後は高等学校国語科と高等学校芸術科の連携の重視の方向性が示されています。これは新学習指導要領に示された教育内容の改善の項目の中で「伝統や文化に関する教育の充実」と「初等中等教育の一貫した学びの充実」に関連した内容で、特に中学校学習指導要領解説国語編には「文字文化」の解釈が初めて明記されました。



「文字文化」とは「文字そのものの文化」「文字を書くことについての文化」のことです。



 また新学習指導要領では高等学校国語は科目構成の大幅な見直しが行われ、必修科目として「現代の国語」と「言語文化」が新設されました。



 新設の「現代の国語」と「言語文化」では、「中学校書写との関連」の観点からは、高校国語「現代の国語」では「生活に生かす書写」の部分での接続を、高校国語「言語文化」では「生活に生きる書写」の部分での接続が検討され、今後授業での取り組みが進んでいく予定です。



 本校では、中学書写と高等学校書道との接続のタイミングを中学3年生の9月と設定しました。また本年度の中学校3年生の書写の授業の中で、高等学校芸術科書道Ⅰと新設高等学校国語「言語文化」の領域を少しづつ学んでいくことにしました。



上記の理由から本時の授業では、中学校国語科書写3年生「古典から学ぼう」の単元で紹介されている書の名品である王羲之の書に触れ、より探究的な学びとして高等学校芸術科書道Ⅰで学ぶ行書の名筆「王羲之・蘭亭序」の臨書に進む学習を設定しました。



 授業の内容を紹介します。



・反転学習としての配信スライドを紹介します



1【学習目標】




・2【右ページ  中学書写の教科書で紹介される「唐の四大家」】


右上図版拡大

右下図版拡大



・3【左ページ  高等学校芸術科書道で学ぶ名筆の紹介】


・左ページ上 図版拡大




・図版拡大



  



・4【高等学校 芸術科書道Ⅰ    王羲之の書の単元 】


  

・上記図版拡大「蘭亭」

 

・「蘭」拡大 

  iPadでの事前送信により、点画が鮮明に見えます。


・説明図版拡大





・5【本時の学習課題「天朗気清」について】

   

・臨書の定義について、書の学習の理論学習を進めていきます。


・古典に基づく学習「形臨」の定義


・学習目標となる部分の確認です




・拡大図版


・拡大図版


・臨書の参考例で学習を進めます



・昨年度の学習単元の参考例を紹介しました





・6【 臨書学習の取り組みです】




・臨書学習の第1回となりますが、用筆の理解や形の把握などは正確に捉えています。




・丁寧な運筆は、毎日の書写の学習で身についた力を応用しています。



・毛筆の姿勢も立派です。


 





【本校の書写書道カリキュラムについて】



 本校では「自国の伝統文化としての文字文化の学び」を、中高6カ年の書写書道教育プログラムで学習します。


 学習内容については中学1年生•2年生で「伝統的文字文化(言語文化)の学びとしての生活に活かす書写技能•知識の基本の徹底」を、中学3年~高校3年生までは「書文化•芸術科書道として書道芸術の表現活動や言語活動としての書の創作表現」を中心に学びます。


 在学中毎週必修で学ぶ書写書道では、「自国の文字文化を次世代へ継承できる美しい手書き文字の担い手の育成」を目標に、毛筆の学習では漢字のすべての書体(楷書•行書•草書•隷書•篆書)の基本用筆と書道史を学び、さらに中学2年からは継続して平安時代の仮名の名筆(=古筆)の臨書を進めていきます。


また硬筆では「文字を正しく整えて速く書くことができ、その書写の力を学習や生活に役立てる」ことを目標に、卒業迄に文部科学省認定書写技能検定試験3級以上の取得を目指します。


 本校の6カ年の書写書道の学びのねらいは、『我が国の将来の知的基盤社会における生涯学習の重要な観点である「生きる力」の定着のための、文化芸術の深い素養と教養と専門技能を有する「知的体力」を養うため』とし、自国文化を自信を持って諸外国に発信できるアイデンティティー【identity】確立のための重要な学びと位置づけています。


将来の国際交流の場面での自国の文化を語ることのできる人材育成に向けては、中高時代の継続した芸術科目の学びのプログラムが必須であると強く考えています。


 指導は3名の書写書道の専門の先生方により実施し、書写の基本技能や文房四宝(筆墨硯紙)の正しい扱い方•漢字の五つの書体の名筆臨書•仮名の名筆臨書学習と書道に関する行事を含めて6年間で約190時間の授業を行います。




 6年間のシラバスでは「表現活動(理論と表現)」をA書写技能の向上、B書道芸術表現の学び、C伝統文化の学び、D言語活動としての活動に分類し、また「鑑賞活動」ではE名筆の鑑賞や他者の表現活動の尊重を柱に「博物館・美術館鑑賞活動」や特別講座「博物館学校連携授業=博学連携授業」を計画していきます。


 指導計画における単元は新学習指導要領に準じた科目単元とし、高等学校における芸術科書道の取得単位数は3とします。


 さらに高校3年生で開講する書道系大学や文字文化を専門に研究する大学および将来の高等学校国語科教諭などを志望する生徒に対しては受験対策ゼミにおいて、将来幼児教育者及び小中高等学校の先生志願者向けの「教育志願者書道講座」(希望制52時間予定)、将来の「書道科設置大学受験対策・文字文化探求演習」(希望者62時間開講予定)について開講し、受講に関するS探求コースの受講規定・受講資格は高2の段階で説明を行います。

 また6年間の書写書道の授業で制作した作品の中で、「漢字の書」「仮名の書」の作品は、全国規模の書道展に出品していきます。



         

2 S探究コースの学習単元名称について


 指導単元名称は以下の13領域としシラバスで周知し、反転授業・アクテイブラーニングを中心とした学習内容を実施します。

 指導単元  (1)漢字の書(楷書 行書 草書 隷書 篆書)

       (2)仮名の書(平安時代の名筆)

       (3)漢字仮名交じりの書

       (4)実用の書

       (5)応用の書

       (6)硬筆

       (7)書道史

       (8)書道概論・書道文化史(外国への伝統文化の発信)

       (9)篆刻・刻字

      (10)レターデザイン

      (11)文字環境表現

      (12)鑑賞研究(博物館・学校連携含む)

      (13)作品装丁・伝統工芸(和紙を含む)

 高等学校における芸術科書道取得単位数

 (入学前の生徒募集関連資料や学校説明会配布資料に記載します)

       高校1年   書道Ⅰ  1単位

       高校2年   書道Ⅰ  1単位

       高校3年   書道Ⅰ  1単位





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聖徳大学附属女子中学校高等学校の書写書道教育・書道部の活動についてお知らせいたします