文房四宝 鈴鹿墨
本校では、生徒の書写書道用具の墨は鈴鹿墨の「極」を、また書道部の生徒は制作する書体に応じて鈴鹿墨の「鈴鹿」などを使用しています。
本校での書写書道では毎時間「墨」を擦ることから学習に臨みます。
入学時には購入する文房四宝(筆・墨・硯・筆)として、墨は「鈴鹿墨」を使用します。
「墨を磨る」という作業は、ただ単に墨液を作るためだけではなく、墨の心地よい香りや微かな磨り音によって心を落ち着けることができたり、墨色や筆・紙のことを考えながら構想を練ることで静かな心の高ぶりが得られる学習前の大切な「学びの準備・心の準備」だと言えるからです。
本校で鈴鹿の墨を選定した理由は、我が国の文字文化の学びにおける「墨」の果たして来た役割やその機能・性能を学ぶ際に、鈴鹿の墨の製法が伝統工芸士の技術により今日でも受け継がれていることやその製法もひとりの職人が一貫生産する工法で作られており、本校の書写書道の学びに欠かせない「学びに最も適した用具を選定する」方針に沿ったからです。
・伝統工芸品「鈴鹿墨」
・墨本体 正面
・鈴鹿墨 裏面 鈴鹿製墨共同組合
・油煙墨「鈴鹿」
・墨箱(桐箱)の中
・鈴鹿墨「青林竹」
・鈴鹿墨「極」(授業で使用 写真は中学1年生が現在使用している状態)
・「極」墨本体
鈴鹿墨は、延暦年間(782~805年)、鈴鹿の山々に自生していた太い松の木を焚いて、松ヤニ成分が燃えて発生する煤(すす)を集め、墨にしたと伝えられています。
鈴鹿墨は、風土や水質と墨の成分が適し、光沢に優れ、さらっとした品質。奈良とともに日本の二大産地として知られています。
江戸時代に諸大名の家紋を書くための上質の墨が必要になったことや、寺子屋の普及により需要が急増し、その後、紀州候の保護を受けて発展しました。
鈴鹿墨は、現在も植物性油煙を原材料に、昔ながらの製法で作られています。鈴鹿の気候風土が墨作りに適したものであることから、発色のよさが特長として知られ、上品で深みがあり、基線とにじみがマッチすることから、多くの書道家に愛用されています。
ほとんどの工程が手作業で、また夏は膠が腐敗したり固まりにくいため、10月から4月までの寒い冬の時期に集中する厳しい仕事です。温度や湿度などに影響される作業だけに、永年の伝統の技術と職人の経験が1丁1丁にこめられています。
1980年(昭和55年)10月16日から経済産業大臣指定の伝統的工芸品に指定され、鈴鹿墨の伝統工芸士の墨職人・伊藤亀堂さんは、その製法や技術の伝承のため国内外に広く「鈴鹿墨」の魅力を発信しております。
伊藤亀堂さんは「ひとりの職人が一貫生産するというのが、鈴鹿墨の特徴。墨は国内だけでなく海外でもつくられていますが、すべての工程をひとりで行える職人は数人しかいないんです」と鈴鹿の墨を紹介しています。
墨の主原料は、油を燃やすことでできる煤(すす)。何の油からとれた煤をどのくらいの割合で使うかによって、色合いやにじみ方は大きく変わります。分業をしない鈴鹿墨だからこそ、この煤の配合を細かく変えることができるのだそうです。
また伊藤さんはご自分が製作した墨を使用した作家の書作品の鑑賞を行なっており、その都度「作り手がひとりなら少量の生産が可能なので、お客様のニーズにきめ細かくお答えすることができます。最初に話し合って方向性を決めることもあれば、作品を拝見してこちらからご提案することも。人との出会いから新しいものが生まれてくるんです。」と語っておられます。
・鈴鹿墨 紹介記事(転載)
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