半切臨書作品制作・落款印押印


 10月23日(水)高校2年生の「漢字の書」行書の名品・王羲之「集王聖教序」の臨書作品のまとめの学習として臨書作品への落款印の押印を行いました。

 今回の授業では、先行した生徒が落款印の押印手順を教材提示装置とプロジェクターを使用し、全員に示し、協働学習の場面を作りながら、落款印の押印を進めました。





・押印作業

  

・ICTを活用した生徒による押印作業手順説明

  

・本時の臨書作品



1. 落款とは



落款とは、「落成款識」の略語です

「落款印」とは落成款識印(らくせいかんしいん)を略した呼び方で、「できあがりをしるす」という意味です。

「落成」は書や絵画の完成のこと。「款識」は署名・捺印を表します。



落款は書画の落成(完成)を証とし、署名して姓名印を押し、そして雅号印をその下に押し、右上に関防印(引首印)を押し、これで名実ともに「落成款識」をしたことになります。

作品の完成、締めくくりとして落款を揮毫し、次に

(1)「姓名印」を押印、

(2)その下に「雅号印」を押印、

(3)右上に「関防印(引首印)」を押して、

   これら一連の押印を済ませて「これで完成」となります。

さらに作品の余白が寂しい場合など、

(4)「遊印」を押すことも自由です。

こうして、落款印は、大切に受け継がれ愛されて続ける日本の文化のひとつです。







2. 今回押印した印泥( いんでい)について



・協働学習による押印作業


箭鏃(せんぞく)印泥(いんでい )2両装(60g)

・箭鏃印泥(せんぞくいんでい)は濃厚な質感のある印泥で、より鮮やかさをもった黄赤的な色をしています。

・印泥内径   60mm  2両装

・外装サイズ 95×95×55mm 

・内容量   60g

・上海西玲印社製


参考:

印泥(いんでい)の成分と扱い方

(成分)

 印泥は基本的原料の朱砂、ヒマシ油、もぐさと、補助材料の顔料、添加材を加えて調合します。印泥の大きさは「両」という単位で表されており1両は約30gです。印泥は油と朱が分離しないように定期的にかき混ぜておきます。


(扱い方)

 使用に際し長い間使わないと印肉の朱砂体が沈み油が浮き上がることがあります。

必ずヘラで印肉をよく練り丸く盛りあげ、また使用する印の印面はブラシ等できれいにしておくこと、押印をする際は印面全体に均等に力を加え、ゆっくり押印すること、さらに印泥は他の印泥と混合しないこと、などです。






3.落款印押印時の書道用語について




【 落款(らっかん)】

 落款とは、「落成款識」の略語です。落款の形式は古く足利時代より、発達したもので書画の落成(完成)を証とし、署名して姓名印を押し、そして雅号印をその下に押し、右上に関防印を押し、これで名実ともに、「落成款識」をしたことになります。



【 関防印(かんぼういん)または、引首印(いんしゅいん)】

 作品の右肩に押印する印のこと。刻字は、自己の好む句、または、心境を表わす語句などを使います。朱文・白文いずれも用いられます。



【 姓名印(せいめいいん)】

 姓名、または、名前を印刻した印。「氏名印」とも呼ばれ、本名を彫刻します。「この作品の作者○○○○です」を表します。

 朱のベースに文字が白抜きで押す印であることから、「白文印(はくぶんいん)」とも呼ばれます



【 雅号印(がごういん)】

 雅号を印刻した印。雅号を持つ人が使います。本名の氏名を彫刻する姓名印と対で押し、上に姓名印・下に雅号印を押します。白地に朱の文字が浮かび上がる彫り方であることから、「朱文印(しゅぶんいん)」とも呼ばれます。



【 三顆一組(さんかひとくみ)】

 作品の完成を表わす印。落款印の関防印・姓名印・雅号印の3つを「三課一組」といいます。

引首印・姓名印・雅号印の3つの印が「三顆印」としてセットとなりますが、必ずしも三顆全て押すわけではなく、作品によって一顆や二顆で押印するなど自由に使い分けします。



【 雅号(がごう)】

 書道家・文人・画家などが本名以外につける風雅な別名・芸名です。



【 朱文(しゅぶん)】

 文字と輪郭を残して他を印刻した印。押印すると文字と輪郭が朱色に残るので朱文といいます。



【 白文(はくぶん)】

 文字の部分を印刻し、他を残した印。押印すると文字が白くなるので白文といいます。



【 印矩(いんく)】

 印をまっすぐに押印する時や、重ね押しをする時に使います。印矩を動かさないのがポイントです。



【 印泥(いんでい)】

 基本的な原材料は、珠砂(硫化水銀)油脂(ヒマシ油)、繊維(もぐさ)を混合して作られた。中国製のものが良いとされており光明・美麗が一般的です。



【 印褥台(いんじょくだい)】

 印を押す台を「印褥台」(いんじょくだい)と呼びます。

柔らか過ぎず、硬過ぎない台が印をしっかりと受け止めてくれ、印の細部まで表現することが可能です。押したい位置をしっかり固定してくれる「印矩」(いんく)を合わせて使用します。

位置をしっかり決めたら、印の細部までしっかり押しきることが大事です。

黒檀や花梨の木で作られたものは高級感があります。



【 印稿(いんこう)】

 印刻する前に、印の原稿となるデザインです。



【 印箋(いんせん)】

 印刻した印を押印するための用紙です。白くて極め細かいものが良いとされています。



【 印影(いんえい)】

 印章を紙に押したもの。印鑑ともいう。



篆刻は、中国の殷周時代ごろ使っていた印章をもとに発達した芸術です。篆刻は刻印・治印などとも呼ぶように印を彫ることですが、とくに篆書を彫ることを篆刻と呼んでいます。



  ・臨書作品




  ・今回のまとめでは墨すり機を使用した鈴香墨を使用しました。




  ・臨書の取り組みの様子です。



  ・押印作業

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