身のまわりに見られる隷書


隷書は、篆書の点画が直線化され、簡略化された書体です。

隷書とは、篆書に次いで二番目に古代中国で正書となった書体で、それまで標準書体とされていた小篆(篆書の一種で始皇帝が統一)は画数が多く、書くのがとても大変でした。

そこで、小篆を簡素化して直線的に構成したことで生まれたのがこの隷書です。


隷書は漢の時代になると最盛期を迎えました。


隷書というと一般的には楷書に最も近い八分隷(はっぷんれい)を指します。


このほかにも篆書から隷書に移る過程で使われた古隷(これい)や草書のもととなった草隷(そうれい)などがあり、同じ隷書でも雰囲気はかなり違ってきます。




隷書は現代でも意外なところで隷書を見ることができます。




隷書の字体には安定感があり、波磔による装飾性を備えており、古風な格式を象徴する書体として、宮殿や寺院の題額をはじめ、書籍や看板の題字や紙幣(例えば日本の紙幣に書かれている「日本銀行券」や「壱万円」といった文字)など、私たちの身の回りには、隷書が用いられて例は少なくありません。






隷書の中でも、書道で最もよく見られる八分隷の特徴を紹介します。




【隷書の特徴】


1 字形は扁平。

  これは、記録媒体に木簡や竹筒を使用していたためだと考えられています。


2 起筆は逆筆蔵鋒、筆運は中鋒。

  起筆では逆筆蔵鋒の形をとり、筆の穂先が線の真ん中を通るように筆を動かします。

  そのため穂先が線の中に隠れ、起筆と収筆の部分が丸くなります。


3 横画は水平で縦画が垂直。

  横画は基本的に水平で横画の線と線の間は等間隔を原則とします。


4 左右のはらいが波立つ波磔があります。

 横画の収筆部分や、左右のはらいの部分が三角形状になっています。これを波磔(はたく)といいます。原則として一字の中で一つの画でしか波磔は書きません。


5 転折は別画として書きます。

 口の二画目や見の二画目のような折れの部分を楷書では一画で書きますが、隷書では別々の画として書きます。





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